NFCアンテナ設計・共振調整・解析&センサ搭載無線モジュール開発

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非接触ICカードの共振周波数


 非接触ICカードの共振周波数は、13.56MHzだけでなく利用場面に適した値に設定・調整している例を紹介します。



 ISO14443,ISO18092, ISO15693の非接触ICカードやRFIDタグの共振周波数は13.56MHzに設定・調整することが重要だと広く考えられているようですが、実際には、利用する場面を想定し、共振周波数を13.56MHzに設定・調整しない場合があります。

 その代表的な例として、SUICAやICOCAなどの交通系非接触ICカードがあります。

 図1に、ICOCAカードとEX-ICカードの共振周波数を測定した結果を示します。 3枚とも共振周波数を17MHz付近に設定・調整されています。

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             図1.ICOCAカードとEX-ICカードの共振周波数


 図2(a)は、ICOCAカード2枚を重ねて測定した結果です。 2枚重ねたときの共振周波数は、13.01MHzでした。
 また、図2(b)に、ICOCAカード2枚とEX-ICカード1枚の合計3枚を重ねたときの測定結果を示します。 このときの共振周波数は10.92MHzでした。

 非接触ICカードを複数枚重ねたとき、共振周波数は1枚のときよりも低い方に移動していることがわかります。
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      図2.ICOCAカードとEX-ICカードを重ねたときの共振周波数

 また、1枚、2枚重ね、3枚重ねの状態で通信距離を測定しました。<図3参照>
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   図3.ICOCAカードとEX-ICカードの通信距離

通信距離は、
 1枚のとき  :41~43mm
 2枚重ねのとき:35mm(1枚の通信距離の約83%)
 3枚重ねのとき:20mm(1枚の通信距離の約48%)
3枚重ねても通信できることが確認できました。
<コメント>
 これは、財布に複数枚の非接触ICカードを入れたままで改札機のリーダライタにかざすだけで通過できる場面を想定し、非接触ICカードの共振周波数を13.56MHzより高く設定・調整されています。
 (ちなみに、改札機のリーダライタは本測定で用いたリーダライタより出力磁界強度が大きいので、実際の通信距離は長くなります。)



 次に、共振周波数を13.56MHz付近に設定・調整された非接触ICカードの場合をみてみます。
 図4に、弊社が入居しているビルの入退管理カード(KRPカード)と市販のフェリカカード(RC-S12)の共振周波数を測定した結果を示します。 3枚とも共振周波数を13.56MHz付近に設定・調整されています。
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             図4.KRPカードとRC-S120の共振周波数

 図5(a)は、入退室管理カード2枚を重ねて測定した結果です。 このとき、共振周波数は10.41MHzでした。
 また、入退室管理カード2枚とフェリカカード1枚の合計3枚を重ねたときの共振周波数は9.03MHzでした。(図5(b)結果数値のみ)
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             図5.KRPカードとRC-S120を重ねたときの共振周波数


 図6に、1枚、2枚重ね、3枚重ねの状態で通信距離を測定した結果を示します。
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   図6.KRPカードとRC-S120の通信距離

通信距離は、
 1枚のとき  :61~72mm
 2枚重ねのとき:14mm(1枚の通信距離の約23%)
 3枚重ねのとき:通信不可

 共振周波数を13.56MHz付近に設定・調整された非接触ICカードの場合、それぞれ1枚のみでは通信距離は長いですが、複数枚重ねると通信距離は極端に短くなる、もしくは通信できない状態になることがわかります。

<コメント>
 これは、おそらく入退室管理カードを首から掛けるカードケースに入れて利用することを想定し、この特性の非接触ICカードを選定したと思われます。
(私は財布にICOCAカードと運転免許証と非接触クレジットカードともに入退室管理カードを入れているので、財布をリーダライタにかざしても通信できず不便しています。改札は通ることができるのに。。。)


Suicaは, 東日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
ICOCAは、西日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
FeliCa(フェリカ)は、ソニー株式会社の登録商標です。

2025.05.21



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